障害年金受給者は残業しても大丈夫?配慮が鍵となる働き方とは
障害年金を受給しながら働くことは、病気やけがを抱える方々にとって、経済的な安定と社会との繋がりを維持するための重要な選択肢となります。
しかし、就労状況が障害年金の受給資格にどう影響するのか、また、残業の有無や職場での配慮がどのように関わるのかなど、多くの疑問や不安があることでしょう。
今回は、障害年金を受給しながら働くことの可能性と、その際に考慮すべき点について、詳細に解説していきます。
障害年金受給者は働けるか
働きながら障害年金は可能
障害年金制度は、病気やけがによって、生活や仕事、あるいは日常生活を送る上で著しい制約が生じた場合に、現役世代の方々も含めて、その方の所得を保障し、生活の安定を図るために給付される公的年金です。
この「生活や仕事などが著しく制限されるようになった場合に」という支給要件から、「働いていると受給できないのではないか」と誤解される方もいらっしゃいますが、障害年金は、働くこと自体を全面的に禁止する制度ではありません。
そのため、病気やけがと向き合いながらも、可能な範囲で働きながら障害年金を受給できる場合があります。
したがって、障害年金の受給資格の判断においては、単に「働いている」という事実だけで判断されるのではなく、その方の病気やけがによる障害の程度が、日常生活を送る上での能力や、社会で働く上での能力にどれほど影響を与えているのか、という点が総合的に勘案されます。
例えば、日常生活動作(食事、着替え、入浴など)にどの程度の介助や配慮が必要か、あるいは、一般の企業でフルタイムの仕事に就き、それを安定して継続することがどの程度困難か、といった要素が考慮されます。
これらの要素を総合的に評価した結果、病気やけがによって生活や仕事などに著しい制限がある、または労働能力が著しく制限されていると判断されれば、就労中であっても障害年金の受給対象となる可能性は十分にあります。
受給者の就労率は高い
障害年金を受給している方々の中での就労率は、決して低いものではなく、むしろ一定の割合で就労されている方がいらっしゃいます。
例えば、厚生労働省の社会保障審議会年金部会資料等によれば、令和元年時点で、身体障害のある受給者の約半数(約48%)、知的障害のある受給者の約6割(約58.6%)、そして精神障害のある受給者の約3分の1強(約34.8%)が、何らかの形で働いています。
これらの統計データは、多くの障害年金受給者が、自身の障害や病状と折り合いをつけながら、あるいは専門的な支援や職場での配慮を受けながら、自身の能力やペースに合った働き方を見つけ、社会との繋がりを保ち、経済的な自立も目指しながら、年金を受け取っている現実を示しています。
障害年金は、あくまで生活を支えるための「所得保障」であり、働く意欲や能力のある方を排除するものではない、という制度の設計思想が、こうした就労率にも反映されていると言えるでしょう。
ただし、就労しているという事実は、障害年金の審査や更新の際において、障害の程度を判断する上で非常に重要な参考情報となることも事実です。
そのため、単に働いているという事実だけでなく、どのような条件で働いているのかを具体的に説明することが求められます。

障害年金受給と残業の関係
残業は障害年金審査に影響
障害年金の審査において、個々の障害の程度はもちろんのこと、それが日常生活や社会生活、そして就労にどの程度影響を与えているのか、という点が総合的に評価されます。
特に、残業をこなすことが可能な状況にあると判断されることは、審査において重要な影響を与える要素となり得ます。
「継続的に残業できている」という事実は、通常の勤務時間に加えて働く体力や集中力、業務遂行能力があると評価される可能性があるためです。
このような状態にあると判断されると、「日常生活や仕事への著しい制限がない」あるいは「労働能力の著しい制限がない」と見なされ、結果として障害年金の受給資格の判断に影響を及ぼす可能性があります。
具体的には、精神疾患や発達障害などの場合、症状が改善し、社会復帰できている、あるいは一定の業務をこなす能力がある、と判断される要因となりうるため、残業をこなせる状況にあるということは、障害の程度を低く評価される可能性を示唆する材料となり得ます。
そのため、残業の有無やその頻度・時間といった就労状況は、障害年金の審査において、慎重に検討されるべき極めて重要なポイントとなります。
働く状況が判断材料
障害年金の審査では、個々の就労状況が、障害の程度や日常生活・就労への支障を具体的に把握するための重要な判断材料となります。
審査官は、単に「働いている」という事実の有無だけでなく、その方の働く「状況」を多角的に精査します。
具体的には、どのような雇用形態(正社員、契約社員、パート・アルバイト、自営業など)で働いているのか、1週間の所定労働時間や1日の労働時間はどのくらいか、週に何日勤務しているのか、どのような業務内容(職務内容、責任の度合い、ノルマの有無など)を担当しているのか、そして、それに見合った給与水準はどの程度か、といった詳細な情報が確認されます。
視覚障害や聴覚障害、人工透析を受けている方、人工関節を使用している方など、一定の傷病においては、障害認定基準に定められた客観的な検査結果の数値(例えば、視力、聴力、腎機能の数値、関節の可動域など)や、身体機能の喪失・低下といった明確な基準によって障害等級が定められています。
これらの傷病の場合、就労状況が障害等級の判定に与える影響は、比較的限定的である傾向があります。
なぜなら、障害の程度そのものが、医学的・客観的な基準で比較的明確に定められているからです。
しかし、精神疾患、知的障害、発達障害、あるいは一部の内部障害など、日常生活や就労への支障が、その方の状況や環境によって大きく異なり、客観的な検査結果だけでは判断しにくい傷病については、実際の就労状況が、障害の程度や日常生活への支障を判断する上で、より重視される傾向にあります。
例えば、フルタイムで就労できているという事実が、障害による日常生活能力や労働能力の低下が軽度であると判断される根拠となりうるのです。

障害年金受給者の配慮
配慮は障害年金受給の鍵
障害年金を受給する上で、職場からの特別な配慮を受けているという事実は、ご自身の障害や病状によって、本来であれば日常生活や仕事を進める上で何らかの制限や困難が生じていることを示す、極めて重要な客観的な証拠となり得ます。
なぜなら、特別な配慮がなければ就労を継続することが困難な状況にある、ということを、客観的に裏付けるものだからです。
配慮を受けることで、本来であればその障害や病状のために就労が困難、あるいはフルタイムでの勤務が不可能であるはずの状況であっても、職場や周囲の理解と支援によって、仕事や社会との繋がりを継続できている、という事実は、障害の程度が一定以上であることを示す証拠となり得るのです。
単に「働けている」という事実だけがあると、障害の程度が軽い、あるいは日常生活や仕事への支障が少ないと判断されてしまうリスクがありますが、どのような配慮を受けて、どのような工夫をしながら働けているのかを具体的に説明することで、そのリスクを軽減し、障害の程度を適切に評価してもらうことに繋がります。
したがって、受給の可否や等級の判断において、職場からの配慮の有無とその内容は、非常に重要な鍵となります。
具体的な配慮内容を伝える
職場から受けている配慮の内容は、障害年金の申請や更新の際に、具体的に、かつ正確に伝えることが極めて重要です。
単に「配慮してもらっています」と漠然と記載するだけでは、その重要性が十分に伝わりません。
具体的には、例えば、通常よりも短い勤務時間(いわゆる時短勤務)での勤務、担当する業務内容の軽減や、より負担の少ない部署への配置換え、精神的な負担が大きい対人業務や電話対応業務の免除、定期的な面談による業務の進捗確認や相談機会の設定、業務遂行のために必要な指示の明確化や、作業手順の簡略化、あるいは、特別な設備(例:エルゴノミクスチェア、音声入力ソフトなど)の提供や、業務遂行のための介助(例:書類の整理、資料の読み上げなど)といった配慮が挙げられます。
また、定時での退社が必須であることや、残業の免除も、仕事への時間的な制約や負担の軽減を示す配慮の一つとなり得ます。
これらの配慮を受けているという事実を、障害年金の申請書類(例えば、日本年金機構所定の診断書や、病歴・就労状況等申立書など)に具体的に記載することが求められます。
さらに、可能であれば、配慮を受けていることを証明する客観的な資料(例:職場からの配慮内容を明記した雇用契約書、就業規則の該当箇所、事業主の証明書、主治医の意見書など)を添付することも、審査で障害の状態を適切に理解してもらうための参考資料となる可能性があります。
配慮によって、本来の能力では得られないはずの給与水準になっている場合などは、その状況を示す資料を添付することも有効な手段となり得ます。
まとめ
障害年金を受給しながら働くことは可能です。
実際に、多くの受給者が自身の体調や障害の状態に合わせた働き方をしています。
ただし、審査や更新の際には、就労状況や残業の有無、職場で受けている配慮の内容が重要な判断材料となります。
特に、継続的な残業がある場合には、障害による制限が少ないと受け取られる可能性もあるため注意が必要です。
そのため、実際にはどのような制限があり、どのような配慮を受けながら働いているのかを、申請書類や更新時の書類に具体的に記載することが大切です。
必要に応じて、障害年金に詳しい社会保険労務士などの専門家に相談すると安心です。


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