障害年金の制度は2025年に改正?改正法案について社労士が解説!

障害年金とは

「障害年金」とは、公的な年金の1つで、病気や事故が原因で障害を負った方へ、国から年金が支給される制度です。障害者のための特別な手当と勘違いされている方もいらっしゃいますが、実は老齢年金と同じ公的年金です。

年金が支給されるには審査のうえ、障害等級に該当していると認定される必要がありますが、年金を請求する(申込む)ことは全国民の権利であり、要件を満たす可能性がある方は、障害年金を請求することができます。基本的には、65歳以前に事故や病気で障害のある状態になり、日常生活や仕事が困難になって生活が立ち行かなくなるのを防ぐための制度です。

公的年金制度とは

公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金保険」の2種類があります。国民年金は20歳になったら全国民が自動的に加入する基礎年金です。就職等して会社員や公務員、私学教職員になると、さらに厚生年金保険にも加入します。国民年金は保険料も支給される年金額も一定額ですが、厚生年金保険はその人の給料の額に応じて保険料が決まり、支給される年金額も納めた保険料の額や加入期間によって基礎年金額に上乗せされる額が変わります。

障害年金が改正される?

障害年金は、障害を持つ方を経済的に支える制度ですが、申請までが非常に複雑で、問題視されていました。

そのような中で、令和7年6月13日に「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」が成立しました。

今回の改正法では、障害年金に関する内容として「直近1年要件」の時限措置が10年延長されました。一方で、これまで議論されていた初診日要件の見直し、事後重症請求の支給開始時期、障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い、障害年金と就労収入の調整については、今回の改正法で具体的に制度化されたものではありません。

そのため、この記事では、これまで検討されてきた内容と、令和7年の年金制度改正法によって実際に進んだ内容を整理して解説します。

(参考資料:厚生労働省 第17回社会保障審議会年金部会 資料2 令和7年年金制度改正法関連資料

障害年金の改正で検討されていること

1.初診日要件

初診日について議論されているのは、「障害厚生年金において、保険事故の発生時点を初診日とすることを維持しつつ、延長保護や長期要件を認めるべきかどうか。」です。

延長保護とは

被保険者資格喪失後の一定期間内に初診日があれば、被保険者資格喪失後の保険事故発生も給付対象にする考え方です。

 

長期要件とは

厚生年金保険料の納付済期間が一定以上あれば、被保険者資格喪失後に保険事故が発生した場合であっても、厚生年金の給付対象にする考え方です。

例えば、厚生年金に加入していた方が、障害によって退職せざるを得ない場合に、初診日以前に退職をした場合にも、厚生年金での障害年金申請が可能になり、障害年金の受給可能性や範囲が大きくなります。

検討されていること

ここで問題となっているのは、現行の社会保険制度では、保険加入中に発生した保険事故に対して給付を行うことが原則であり、現行は、初診日の時点において厚生年金保険の被保険者でなければ障害厚生年金は支給されないということです。

つまり、初診日の僅かな違いによって障害厚生年金が受給できなかったケース(初診の直前に就労を辞めてしまったような場合)や、過去に厚生年金保険料を長期に渡って納付していたが保険事故発生時点で厚生年金被保険者ではなかったために受給できなかったケース等について、些細な事情やタイミングの違いによって支給結果が左右されてしまうのは不公平ではないかということです。

ただし、令和7年6月13日に成立した年金制度改正法では、この初診日要件の見直しについて、具体的な制度改正として盛り込まれたものではありません。現時点では、今後も検討課題として注視していく必要があります。

2.事後重症の場合の支給開始時期

ここで問題となっているのは、「事後重症の場合でも、障害等級に該当するに至った日が診断書で確定できるのであれば、その翌月まで遡って障害年金を支給することを認めるべきかどうか」です。

現在の制度では、障害認定日において障害等級表に定める障害の状態に該当しなかった者でも、その後症状が悪化し、65歳に達する日の前日までに、障害等級表に定める障害の状態になり、本人の請求があったときは、請求日に受給権が発生します。

このとき、障害年金が支給されるのは請求日の属する月の翌月分からとなります。

そのため、事後重症を請求する際の現行の制度では、月をまたぐ前に少しでも早く申請をしたほうが得と言われています。

ですが、障害年金の申請は非常に複雑で、認知度もあまり高くないため、障害の状態に該当した時点から申請手続きが遅くなってしまったケース等について、請求日の属する月の翌月からの支給となると、障害年金をもらえる状態にあったのに、もらえなかった期間が多くなってしまいます。

それを診断書で障害の状態を確定できるのであれば、障害年金をもらえる状態にあったとみなし、障害年金が遡及して支給されるようにしましょう、ということです。

ただし、令和7年の年金制度改正法では、事後重症請求の支給開始時期について、具体的な見直しが制度化されたものではありません。現時点では、従来どおり、原則として請求日の属する月の翌月分から支給される取扱いとなります。

 

3.直近1年要件

ここで議論されていたのは、直近1年要件について、令和8年3月31日が当該措置の期限となっていたため、次期制度改正に向けて、これまで同様に10年間の延長をすべきかどうかです。

直近1年要件とは

そもそも障害年金を申請するためには「保険料納付要件」を満たしていることが必要です。

保険料納付要件は、「保険料納付期間の3分の2以上の期間、保険料を納めていること」、又は「直近の1年間に保険料の未納がないこと」で満たすことができます。

ですが、後者の「直近1年間に保険料の未納がないこと」は例外として、期限付きで認められている制度です。

この直近1年要件については、令和7年6月13日に成立した年金制度改正法により、時限措置が10年延長されました。

そのため、初診日が令和18年3月末日までの場合で、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ、納付要件を満たすものとして扱われます。

つまり、今回の改正により、直近1年要件については、これまでと同様の取扱いが令和18年3月末日まで継続されることになりました。

4.障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い

ここで議論されているのは、障害年金受給者の法定免除期間について、保険料納付済期間と同じ扱いにするべきかどうかです。

障害等級が2級以上の受給者の場合、国民年金保険料については法定免除となり、納付しなくてもよくなります。

ですが、障害の状態が65歳前に軽減し、障害基礎年金の支給が停止された場合、65歳以降は、法定免除期間について保険料納付済期間に算入されなくなり、結果的に、減額された老齢基礎年金を受給することになります。

つまり、65歳前に障害年金が支給停止になってしまった場合には、免除されていた期間分の保険料を納付しないと、老齢年金が減額されてしまうということです。

もし、法定免除期間について保険料納付済期間と同じ扱いになった場合は、障害の状態が軽減し、障害年金の支給が停止された場合でも、免除されていた期間分の保険料を払ったとみなされ、65歳以降に支給される老齢基礎年金については、現行よりも受給額が増額となります。

ただし、令和7年の年金制度改正法では、この障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱いについて、具体的な改正として盛り込まれたものではありません。現時点では、従来の取扱いが継続されています。

5.障害年金と就労収入の調整

ここで議論されているのは、障害年金と就労収入の関係を考慮して、一定の調整を行うべきかどうかです。

障害年金では、原則として、就労をして収入を得たとしても、直ちに障害年金が支給停止になったり、減額されたりすることはないとされています。

ですが、障害の種別によっては、更新時の就労状況によって障害等級の変更が行われ、その結果として、年金額の減額や年金支給の打ち切りが行われることがあります。

また、障害基礎年金では、20歳前に初診日がある場合で、20歳以後、1級又は2級の障害の状態にある場合に支給される場合、本人が保険料を納付していなくとも障害年金が支給されることから、一定の所得がある場合等については、その間の年金が支給停止されることとなっています。

どのような方向での改正となるかによりますが、様々な障害がある中で、就労の状況、所得の状況等に応じて、障害年金の額が調整される可能性について議論されてきました。

現行では、就労状況等に応じた障害等級の変更により障害年金が支給されない者に対して年金が一部支給されるようになる場合もありますが、逆に、現行では全額支給されている者が支給停止等になる場合も考えられます。

ただし、令和7年の年金制度改正法では、障害年金と就労収入の調整について、具体的な改正として制度化されたものではありません。現時点では、就労収入があることのみを理由として、直ちに障害年金が支給停止・減額される仕組みが新たに導入されたわけではありません。

6.子の加算の見直し

今回の年金制度改正法では、障害年金そのものの受給要件とは別に、子を養育している年金受給者への加算についても見直しが予定されています。

現在、障害基礎年金では、1級又は2級の障害の状態にある方に生計を維持されている子がいる場合、子の加算が行われます。一方で、障害厚生年金には子に係る加算はなく、障害基礎年金と障害厚生年金の間で取扱いに違いがありました。

令和10年4月から予定されている見直しでは、年金を受給しながら子を育てている方への支援を強化するため、子の加算が充実される予定です。具体的には、子に係る加算額について、第1子・第2子・第3子以降という区分を見直し、子ども1人あたりの加算額を一律にする方向で整理されています。

また、障害厚生年金についても、一定の要件を満たす場合に子に係る加算が設けられる予定です。ただし、基礎年金と厚生年金の両方で子の加算対象となる場合は、厚生年金側の加算が優先され、基礎年金側の加算は支給停止となる予定です。なお、具体的な取扱いは今後の日本年金機構等の案内を確認する必要があります。

この見直しは、令和10年4月からの施行が予定されているため、子を養育しながら障害年金を受給している方、または今後請求を検討している方は、今後の具体的な取扱いにも注意が必要です。

障害年金の改正で変わること

今回議論されていた内容の多くについては、障害年金を受給出来る範囲を広げよう、という方向性が多く、もし改正がされれば、今後、障害年金の申請を検討する方にとってはプラスに働くことが多いかと思います。

ただし、令和7年6月13日に成立した年金制度改正法において、障害年金に関して明確に具体化されたものは、主に直近1年要件の時限措置の10年延長です。

一方で、初診日要件の見直し、事後重症請求の支給開始時期、障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い、障害年金と就労収入の調整については、今回の改正法で具体的に制度化されたものではありません。

また、令和10年4月からは、子の加算に関する見直しが予定されています。障害厚生年金にも子に係る加算が新設される予定であり、対象となる方にとっては、関連する重要な改正といえます。

今後も議論の方向性や施行に向けた具体的な取扱いについては、注視していく必要があります。

また、改正について進捗があれば解説していきたいと思います。

 

ご相談ください

ここまでご覧いただきありがとうございました。
障害年金に関する年金制度改正の解説は以上です

障害年金は障害をもつ方にとって、経済的な補助を得られる、非常に重要な制度です。

一方で、申請までの手続きや必要な書類はとても複雑でわかりにくい制度でもあります。

そこで、当事務所では無料で障害年金に関する相談を受け付けています。

また、ご自身での申請が難しい場合には有料での申請サポートも行っております。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

また、当事務所では障害年金に特化した女性社労士がご相談を担当しております。

身の回りの状況やどのような生活をしているかなど、プライベートな内容のご相談を受けることもございますので、同性の方が話しやすいといったこともあるかと思います。

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