【2024年最新】遡及請求(遡り)の成功率はどのくらい?申請の注意点やポイントについて社労士が解説!

障害年金とは

「障害年金」とは、公的な年金の1つで、病気や事故が原因で障害を負った方へ、国から年金が支給される制度です。障害者のための特別な手当と勘違いされている人も見えますが、実は老齢年金と同じ公的年金です。

年金が支給されるには審査のうえ、障害等級に該当していると認定される必要がありますが、年金を請求する(申込む)ことは全国民の権利、誰でも障害年金を請求することが出来ます。基本的には、65歳以前に事故や病気で障害のある状態になり日常生活や仕事が困難になり、生活が立ち行かなくなるのを防ぐための制度です。

障害年金を申請できるタイミング

障害年金の申請は原則的に初診日から1年6か月(認定日)を経過していれば申請することができます。

病気によって特例はありますが、初診日から1年6か月経過した日に診断書を書いてもらえれば、最速で申請ができます。

認定日の特例

以下の傷病・治療法に該当する場合は特例として、通常よりも認定日までの期間が短くなります。

傷病・治療法 認定日
人工透析療法 透析開始から起算して3か月経過した日
人工骨頭・人工関節 挿入置換した日
心臓ペースメーカー・植込み型除細動器(ICD)・人工弁 装着した日
人工肛門造設・尿路変更術 総設日・手術日から起算して6か月経過した日
新膀胱造設 造設した日
切断または離断による肢体の障害 切断または離断した日(障害年金手当金の場合は創面治癒日)
咽頭全摘出 全摘出した日
在宅酸素療法 在宅酸素療法を開始した日

 

遡及請求とは

障害年金の申請方法は、3種類に分けられます。遡及請求はそのうちの障害認定日の時点にさかのぼって請求する方法のことです。

①認定日請求(本来請求)

障害認定日の時点で障害等級に該当するかどうか審査してもらう請求を「認定日請求(本来請求)」といいます。

障害認定日※とは初診日から1年6ヵ月経過した日をいいます。

※初診日から1年6ヵ月以内に傷病が治った(症状固定した)場合は、その治った日が障害認定となる特例あり。

 

 

②遡及請求

障害認定日に障害等級に該当していたけれど、障害年金のことを知らずに当時は請求していなかったという人などは、障害認定日の時点にさかのぼって請求することができます。

これを「遡及請求」といいます。遡及請求は必ず「障害認定日」にさかのぼって請求します。

1番症状が悪かった任意の時期にさかのぼって請求することはできません。

また、障害認定日が5年以上前でも、さかのぼって受給できるのは時効により5年分のみです。

 

 

③事後重症請求

障害認定日の時点では症状が軽く障害の状態に該当しなくても、あとから障害等級に該当する程度の症状になった場合、該当するようになったときに請求することができます。

これを事後重症請求といいます。ただし、事後重症請求は65歳までにしなければなりません。

 

遡及請求をするためのポイント

遡及請求が自分はできるのか気になる方は、以下の3ポイントをクリアできれば請求できる可能性が高いので参考にしてください。

①認定日から3ヵ月以内の診断書と現在の診断書の2枚を提出

②その診断書の内容がそれぞれの障害認定基準を満たしている

 

すぐ申請した方がよいのか

自分が遡及請求をする条件が整っているかわかったところで、ではいったいいつごろ遡及請求をするべきかお悩みかもしれません。

結論は、「なるべく早く遡及請求は行った方がよい」です。

理由は3つあります。

 

①カルテが処分されてしまう可能性があります

カルテ保管の義務期間は医師法により5年となっています。

そのため診断書を依頼しても「カルテは廃棄したので診断書を書くことが出来ない」と断られてしまうケースや、病院自体が廃院されしまい診断書を取得することができないことがあります。

 

②当時の医師が退職・転院してしまった

遡及請求の診断書は当時受診した医師がいらっしゃれば書いてもらえる可能性がありますが、大きな病院ほど当時の医師がいないことがあります。

その場合には、当時の診断書の作成を断られる場合もあり得ますし、今の医師が当時のカルテを参考に書くという場合があります。

しかし、カルテの保管義務期間の5年以上前となると当時のカルテがない、たとえあったとしても当時の状況が正確に反映された診断書とはならない可能性もあります。

 

③障害認定日が5年以上前であれば、遡及分が時効でどんどん消えて行ってしまいます

遡及請求は5年以上前の分は請求することができません。

遡及請求のルールでは審査の結果、認定日での請求が認めれられた場合には1回目の振り込みの際に、過去の年金額がまとめて支給されることになっています。

しかし、時効によって5年以上前の年金の請求権は消えてしまうので、仮に10年前の申請が認めれたとしても、遡及分の年金を支払ってもらえるのは5年分のみとなってしまうのです。

例えば、障害基礎年金2級の場合、約月額6万5千円受給されます。

これが1年遅れれば約80万円、3年遅れれば約240万円、5年遅れれば約400万円もらえるはずの額を逃してしまうことになります。

自分で申請する場合は、約半年~1年かかることがあります。

それに申請しても審査が通るとは限りません。なるべく早く・少しでも受給可能性を高めたいのであれば、ぜひ一度専門家にご相談ください。

遡及請求の成功率

遡及請求がどのくらい成功しやすいのか・難しいものなのか気になっている方もいらっしゃるかと思います。

遡及請求の成功率の高さは傷病によって変わってきます。どんな傷病だと受給しやすいのか解説します。

 

【成功率が比較的高い傷病】

人工関節・人工肛門や脳梗塞、ペースメーカーなどの傷病は、いつ症状が固定したか証明する「障害認定日」が認められやすいため、遡及請求が成功しやすい傾向があります。

精神疾患の方は、通院歴が長い場合や、就労されていないと比較的成功しやすいです。

 

【成功率が比較的低い傷病】

糖尿病など病状が徐々に進行する傷病は、障害認定日を証明しづらいため、遡及請求が難しい場合があります。

・糖尿病は初診日の証明が困難

・精神疾患は認定日から現在までの間に病状が回復した期間があると難しい場合がある

ただし、病状によって状況がかなり変わりますので、まずはご相談ください。

 

遡及請求が難しいケース

遡及請求で受給が難しいケースとして以下のパターンがあります。

1.かかりつけ医がおらず、複数の病院で受診をしているケース

複数の病院で受診をしている場合、初診日の証明が難しいことがあり、遡及請求の申請が困難になることがあります。

 

2.初診日が5年以上前のケース

ご自身の病歴を発症当時から覚えている方は少ないのが現実です。発病から初診までの状況、当時の行動範囲などを詳しく聞き、証拠の残っている可能性がある場所を探していくことが必要になります。

実は初診日の証明は受診状況等証明書(初診日を証明する書類)を出せなくても、それに代わる資料が見つかれば申請できることがあります。

 

3、障害認定日の診断書が取得できないケース(通院をしていないケース)

発達障害・知的障害などの先天性の傷病であった場合、病院にかかっていらっしゃらないケースも多く見られます。

20歳の前後に病院を受診することでそれ以前の障害年金を遡及請求ができる場合もありますので、一度病院に係ることをお勧めします。

 

障害年金で遡及請求が成功すると扶養から外れてしまうのか?

遡及請求が成功すると、過去の年金を一度に受け取ることになるので、扶養に入れなくなるのでは?と思う方もおられるのではないでしょうか。

一般的に「扶養」と呼ばれるものには、所得税・健康保険・国民年金が含まれますので、順にご説明します。

 

所得税

障害年金は非課税所得になりますので、税金はかかりません。

したがって確定申告等も必要ありません。

 

健康保険と国民年金

健康保険と国民年金については一定の要件を満たすことにより、被保険者の扶養に入ることができます。

健康保険では被扶養者、国民年金では第3号被保険者といいます。

扶養に入るためには、扶養される方に年間収入の基準があります。

たとえば、60歳未満で被保険者と同一世帯の場合では、以下の①、②の両方を満たす必要があります。

①年間収入が130万円未満

扶養される方が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は、「180万円未満」と読み替えます。

②年間収入が被保険者の年収の1/2未満

つまり、障害年金の年額が180万円以上の方は、扶養に入ることができなくなります。

 

では、遡及請求が認められた場合、たとえば障害年金の年額が120万円だと、5年分で600万円を一時金で受け取ることになります。そうすると、年額は180万円未満でも、その年に振り込まれる額は180万円以上になっています。

このケースはどうでしょうか?

 

扶養の基準となる年間収入とは、「現時点から将来1年間の収入」のことを指します。

さかのぼって受給した障害年金は一時金であり、将来も続く収入ではありませんので、この年間収入には含まれません。

ですので、扶養に入ることができます。(他の要件は全て満たすものとします。)

 

障害年金の年額が180万円以上の場合は、その方は扶養に入れませんので、ご自身で国民健康保険と国民年金に加入していただく必要があります。

 

国民健康保険と国民年金の免除制度について

国民健康保険には、障害者の免除制度はありませんが、障害年金は非課税所得ですので、所得額が少なければ国民健康保険料は少なくなります。

一方、国民年金には、障害等級2級以上の方を対象に「法定免除制度」があります。

法定免除制度では年金保険料を支払う義務がなくなり、全額免除されます。

法定免除を受けるためには役所での手続きが必要です。

デメリットとして、法定免除の期間は将来の老齢年金額に半額として計算されるため、老齢年金を満額もらうことはできなくなります。

将来、障害状態が軽くなる等の理由で障害年金ではなく老齢年金を受給する可能性がある方は、法定免除期間中の年金保険料を支払うことも可能ですので、ご検討いただく必要があります。

当事務所の遡及請求事例

統合失調症で20歳前傷病で障害基礎年金2級、遡及申請・事後重症が認められたケース

女性(20代/就労していない)
傷病名:統合失調症

相談時の状況

就労支援センターでの障害年期勉強家に参加されたお父様よりご相談いただきました。

 

社労士による見解

この方は短大入学されて直ぐに幻覚・幻聴に悩まされ休学。家族の勧めで精神科を受診。統合失調症と診断されました。通院以外は自室に引きこもり容姿を気にされ、マスクを外せない日々をすごされました。入浴や歯磨き着替えも出来ず家族とも通院時以外は接触できませんでした。

被害妄想と幻聴が顕著で外出困難だったこと、家族も本人を説得できず、通院を自己判断で通院を中断。

両親の勧めで市の自立・就労支援窓口に登録し、簡単なアルバイトに就いたが他人の視線が怖く数日で行かれなくばりました。その後も症状は上記と変わらず、相変わらず自室に引きこもっていました。

その後、ご家族の説得で通院と服薬治療を再開。自分の容姿や写真を撮られるかもしれないとゆう被害妄想は以前よりよくなり、自宅でお母さまの家事手伝いなどはできるようになりました。

しかし家族の付き添いがないと外出は難しく、就労は依然難しいご様子に感じました。

 

受任してから申請までに行ったこと

この方は、通院は一時中断したものの、同じクリニックに通われていたため、初診時の証明・障害認定日頃の診断書と現象の診断書と同一クリニックで書いてもらうことが出来ました。

20歳前傷病のため、所得非課税証明書5年分を代理で取得し申立書を作成し、添付書類として提出しました。病歴・就労申立書は、ご本人様、お父様とも連携をとり、丁寧にサポートし、聞き取りを行い作成しました。

結果

無事、障害基礎年金2級・遡及請求が認められました。

当事務所は、無料相談を受け付けております。遡及請求に関してご質問や相談されたい方は、

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